2010/11/08

ミクロコスモスとマクロコスモス

~小品に見るショパンの魅力と大曲に隠された構成美~

 シューベルトの出現をもって主題労作の時代は終わり、時代はロマン主義へと移行していく。そこでは均整の取れた構成美よりも、バランスを崩してでも自らの内面を独白することが求められた。
 そのロマン主義の旗手たるショパンは、たった1分の小品でも彼独自の世界観、ポーランドの民族性、そして誰にでも受け入れられる普遍性を同時に表現することのできる、強い自己表現と極めて高度なテクニックを持っていた。特に、生涯に60曲以上も作曲したマズルカは、短いながらも1曲1曲が完結した世界を持っている非常に芸術性の高い作品である。
 その一方でバッハを敬愛していたことでも知られている彼は、古典的な構成美の世界にも足を踏み入れていく。その結果生まれた二つのソナタは、青年期に書かれた習作、ソナタ1番や、二つのコンチェルトなどとは次元を異にするグランドピースとなっており、過去の大作曲家達が積み重ねてきた職人芸を継承していると同時にショパン特有の叙情性も十全に表されている。
 ここでは、そんな二つの相反する要素をショパンがどのように両立させていったかを感じられるようなプログラムを組んでみた。
松本和将